あたしは、ごくりと生唾を呑み込み、ノートをゆっくりと差し出した。


えぇと……、

引く……、引く……。

どうやって引けばいいんだ?


えぇと……、

………。

………。


あっ、そうだ、あの手でいこう!


笠原くんがノートを奪い取った瞬間。

あたしは、くいっと顎を斜め上にあげた。



「あぁら、ごめんなさいねぇー」



高飛車な態度でそう言いながら、あたしよりずいぶんと背の高い笠原くんを見上げる。


場が、しんと静まり返った。

笠原くんも、その隣りにいた立花くんも、ぽかんと口を開けたまま言葉を発することができずにいる。