笠原くんは、あたしが隣にきても、何も声をかけてくれない。

視線すら合わせず、カメラを手にした聡くんの方ばかり見ている。



……あたし、ウエディングドレス着ているのに。

やっと思いが通じ合ったのに。

なにか一言くらい、声をかけてくれたっていいじゃない。



幸せな気分なのに、あたしの口は自然とヘの字に曲がる。



「――……なぁ、尾関」

「……えっ?」



視線を聡くんの方に向けたまま、笠原くんがぽつりと呟く。



「いつか……」

「……いつか?」



笠原くんは、考え込むような顔つきで目を左右に泳がせる。