翠川くんと話すたびにいつも思う。
笠原くんとも、こんなふうに笑いながら話す日がくるのかなって。
あたしに笑ってくれなくても、無愛想な表情のままでいいから、ほんの少しくらいは話せる日がくるのかなって。
遠い昔の思い出と、笠原くんのことを思いながら、あたしはゆっくりとまぶたを閉じた。
なんとか体調も回復して、あたしが教室に戻ったのはお昼休みだった。
保健室に迎えに来た愛美と一緒に、騒がしい廊下を教室まで歩く。
「絶対、翠川のほうがいい!」
愛美は強い口調でいきなり言う。
「なんで翠川くんが出てくるのよ」
「あんたが倒れたとき、迷いもせずに抱きかかえて教室出て行ったのよ?あれが笠原だったら逃げてるって!」
「だ、抱きかかえた!?」
「そうよ!」