そういえば……。
中学の三年間、バレンタインデーに笠原くんへ渡そうと思って作ったチョコレート。
結局は渡せなくて、いつも翠川くんが貰ってくれていたなぁ。
『俺が代わりに食べてもいい?』
顔をくしゃくしゃにさせて笑いながら、泣きじゃくるあたしからチョコレートを受け取ったっけ。
もはや毎年恒例になっていて……。
中学最後のバレンタインデーには、こんなことも言われた。
『俺は尾関の作ったチョコ、毎日食べたいくらいだけどな』
その言葉に、なんだか救われたような気がして。
涙がぴたりと止まったあたしの隣りで、チョコを一口食べた翠川くんと顔を見合わせて笑った。