『あなたのことを思うと夜も眠れません』


ずっと昔に、そんなことを笠原くんへのラブレターに書いた。

そんなの嘘。

笠原くんのことを思っていても、夜はちゃんと眠れるんだ。



「……尾関、大丈夫か?」



聞き覚えのある、低い声。

どこからか吹いてくる風が、あたしの頬を優しく撫でる。


ゆっくりと目を開けると、最初に視界に入ってきたのは白濁色の天井だった。

そこからわずかに、視線を左側に移す。



「……翠川くん?」

「あーっ、もう、マジびっくりしたってー!」



あたしと目が合うなり、翠川くんはホッとしたように顔をくしゃくしゃにさせながら笑う。