学校の売店にある自販機。

お金を入れたあと、
ボタンを押そうとする指先が真っ先に向かったのは、
聡くんに頼まれたジュースじゃなくて、笠原くんがいつも飲んでいるコーヒーだった。



「ごめんね、すぐ買ってくるね」



わざと、買わなかった。

買ったとしても、笠原くんが受け取ってくれないことくらい分かっていたから。



「別にいらねぇし」



ほらね。

あたしが今、コーヒーを渡していたとしても、笠原くんはきっと同じことを言うんだ。



「ごめん、笠原くん。コーヒー……だよね、ブラックの……」

「………」