コーヒーが飲めないあたしにとって。

ブラックの苦いコーヒーをおいしそうに飲んでいる笠原くんの姿。

同い年なのに、なんだか大人に見えて、いつもドキドキしていた。



「聡くん! ジュース買って来たよ!」



作業を中断して、廊下で休憩している聡くんの元に駆け寄っていく。


その隣……。

もちろん、気づいている。

大好きな、笠原くんがいるってことくらい。

だけどあたしは、聡くんだけを見る。



「おっ、サンキュ。……って、章吾の分は?」



ジュースを受け取りながら言う聡くんに、



「あ……。ごめん、全然頭になかった」



心にもないことを言う。