「太郎、見過ぎ」

ゆうじの声でふと我に帰った。
と同時に耳が熱くなるのを感じた。

「いや!なんか!見たことない子だなって思っただけだよ!」

我ながらひどい言い訳である。

「ふーん。」

ゆうじはにやにやしながら、
座ったままの僕を見下ろした。

「美人だよな、田中奈胡」

「知り合いなの?」

「いや、喋ったことないけど。有名人だから名前は知ってるかな」

有名人?と聞き返す間も無くゆうじは話した。


「正直俺もよく知らないけど、女子に"へんなこ"って呼ばれてる子」


変な子。変奈胡。
彼女の短過ぎる髪の毛をもう一度見る。

なんとなく納得できる。