晴ちゃんが出てきたら、ここで渡そう。


一度、深く深呼吸した私はインターホンを鳴らした。


そして開く扉。


「…お、おはっおはよ」

「おはおはよ」

「真似しないでよ。
てゆか、着替えてないじゃん」


歯磨きしながら現れた晴ちゃんのかっこよさは異常だ。



「まじでさっき起きたもん。
とりあえずあがれよ」

「あ…お邪魔しまーす…」


初めてあがる晴ちゃんの家の中は静まり返っていて、誰も居ないことが伝わってくる。



「部屋、そこの扉だから入ってて」

「はい…」


柄にもなく、緊張しまくっている。



晴ちゃんの部屋はシンプルだった。



「あ、」


部屋に入ってすぐ目についたのは、「いいから聞け」と無理やり渡されて聞いたバンドのCD。


「何突っ立ってんだよ」


「晴ちゃん、このバンドのCD無理やり貸してくれたよね」

「無理やりは余計」


相変わらず無愛想な横顔。


それでもいつもと違う姿に、やっぱり好きだな、なんて思った自分がいた。