「莉夏ちゃん」

正志くんが、駐輪場の入口からちょこんと顔を覗かせる。


彼こそ、私がここにいることを、唯一知っている人物。

あの人とバンドを組んでいて、あの人の親友でもある、ドラマーの正志くん。


『正くん…』

思わず伸ばしそうになった右手を、グッと堪える。


「やっぱりここだと思った。大丈夫?」

正志くんが私の頭をポンポンと軽く叩く。


『ごめん。
別にもう、どうでもいいことなのに、突然頭の中があの頃に戻っちゃった…

また、正くんに迷惑かけちゃったね…』


「俺のことはいいからさ、大輔さんのこと」


ビクッ



そう。
肝心なこと、あったんだ…

大輔さんには、まだなんにも言ってない…