ドックン ドックン

ドックン ドックン

心臓がおかしいくらいに鳴り響いている。


なんにも考えられなかった。

ただ、気が付いたらここにいた。


あの人も、この場所も、あの頃と何一つ変わらない。


今、視界に入るのは綺麗に並べられた自転車。

蛍光灯一つしかない、薄暗いマンションの駐輪場。


コンクリートで囲まれたこの場所は、道路からは死角となる。


悪循環に填っていたあの頃、偶然見つけて毎回逃げ込んでいた。

あの人に見つからない、絶好の隠れ場。


ここは気分を落ち着かせるのに最適だった。



だってここにいること、あの人は知らないんだもん。


でも、彼だけは…