高山side



ずっと気にはなっていた。




電車の中での…視線。





僕が気になったのは…僕を見る女の目じゃない。





__奈留を見つめる一人の視線。





その視線は…真っ直ぐ奈留に向いていた。





僕はそっと後ろを伺ってみた。





そして見つけたのは…座って本を読んでいる男子生徒。






あの制服は…僕や奈留と同じ高校のもの。





視線の正体はあいつか…





なんて思いながら僕はまた奈留に目を移した。





さっき話しかけたら僕の吐息が耳にかかるらしく、顔を赤くした。





…たったそれだけで照れる奈留は最高に可愛い。





男経験がないことがまるわかりだった。








今まで周りにいなかったタイプの女。





こいつに関わるのは…いい楽しみになりそうだ。





そう僕はずっと期待していた。








だが。



「岬…」




そう呟く奈留。




奈留の目線をたどると…そこにはさっき電車で見つけた男が。





どうやら知り合いのようだった。





そして…俺は奈留の目からすぐに読み取った。







奈留はこの男が好きなんだって。









奈留が彼を見つめる目は確かにそう語っていた。




そう気づいたのに…



僕の気持ちはぐちゃぐちゃだった。




奈留が僕意外の男に好意を抱いている__




そう考えると無性に不愉快な気持ちになった。





そして強く思ったんだ。







『奈留の心を奪いたい』



…なんて。