「あ。雨あがってきてる」
気づくと、傘から聞こえていた雨音がしだいに弱くなっていた。
傘から少し顔をだして空を見上げると、雨雲は散りつつあって。
雲のすきまから、うすく虹がかかっているのが見えた。
「二宮くんっ、見て! 虹かかってる!」
あたしは思わず空を指差して、となりの二宮くんを見た。
けれど黒い瞳は虹ではなく、あたしのほうに向いていて。
……ふ、と、やわらかくほほ笑んでいた。
――どきっ……
「っ……」
その表情に、目が、うばわれた。
はじめて見る二宮くんの優しい表情に、
顔がゆっくりと熱くなっていく。