え、ええ~……。
二宮くんって本当に一方的に電話切るんだなぁ。
あたしはまだ二宮くんと電話したことないけど、たしか父親である二宮さんと電話してるときもそうだったよね。
「帰んねーの?」
立ち止まったままのあたしに、
二宮くんはかばんから黒い折りたたみ傘を取り出して聞いてきた。
「う、うん。帰るよ」
「傘は?」
「……手元になくて」
友だちに貸したとは言いづらく、あたしは苦笑してそう答えた。
二宮くんの少し見開かれた目が、ぱちぱちとまばたきを繰り返す。
そのきょとんとした顔、ほんとかわいい。
まあ、本人はこれっぽっちも自覚ないんだろうけど……。