靴箱について、ローファーに履き替える。
生徒玄関を出たはいいものの、躊躇なく大雨の中に飛び込んでいけるはずもなく。
玄関を覆うように屋根が広がっているところで、立ち尽くしていると。
「羽山?」
うしろから、だいぶ耳になじんだ声に自分の名字を呼ばれた。
びっくりして振りかえれば、
スマホを耳に近くに持った二宮くんが、玄関の入り口に立っていた。
「に、二宮くん」
もう帰ったんだとばかり思ってた……。
はち合わせするなんて想定外におどろいていると、二宮くんの持っているスマホからわずかに声が聞こえてきた。
誰かと通話したままだったらしい。
二宮くんはうっとうしそうに「うるさい。もう切る」とだけ相手に伝え、ためらわず電話を切った。