こんなこと、口にしたくなかった。

こんな面倒な女みたいなせりふで、葵衣をこまらせたいわけじゃないのに。



だけど、涙といっしょに感情があふれだして、とまらなかった。



ぼやける視界の端で、葵衣が手をのばしたのがわかる。



その手はそっとあたしの髪に触れて、


……ぎゅっと、優しく抱きすくめられた。




「俺が何年……おまえのこと好きだったと思ってんだよ」




シャツ越しに葵衣の体温と鼓動を感じて、心がふるえた。


静かにささやく葵衣に、涙がさらにあふれ出してくる。




「嫌いになるとか、絶対あり得ないから」


「……っ」


「なにも話せなくて、ごめん。でも、紫乃のこと……すげー大事だから」




ずるい。

抱きしめてそんなこと言うなんて、ずるいよ。


納得できてないのに、これ以上、問いつめられなくなっちゃう。