こんなの、納得できるわけない。

あたしの性格、葵衣ならわかってくれてるはずなのに。


どうして、なにも話してくれないの?




「ごめん……紫乃、」




葵衣が、ドアについていたあたしの手をそっとはずした。



触れた手に、ぐっと胸が締めつけられる。


気づいたら、うつむいたまま、すがるように葵衣の手をつかんでいた。




「葵衣は……あたしと離れても、なにも感じないの?」




さみしいと思ってほしい、なんて、あたしのわがままでしかない。

でも、口が勝手に動いていた。



だってあたしは、葵衣といられなくて、

こんなにさみしいのに。




「いきなりべつべつに暮らすことになって……それだけで悲しかったのに。
見かけても話しかけるなとか言われて、今日だって避けられたし、あたしがどんな気持ちだったかわかる?」




顔をあげたけれど、

視界がにじんで葵衣が見えなかった。



ぽろぽろと頬をつたって、こぼれ落ちていく涙。


がまんしていたつもりだったのに、もう限界みたいだ。



涙を流したのなんて、何年ぶりだろう。




「葵衣はもう、あたしのこと……嫌いになっちゃったの?」