さっきから表情をくずさないあたしを見て、葵衣はばつが悪そうに視線をそらした。
そんな顔するってことは……
あたしのいまの気持ち、わかってるってことだよね。
「紫乃……怒って、る?」
遠慮がちな声に、あたしは鍵を持った手をぎゅっと強くにぎった。
「っ、当たり前でしょ! なんであたしが追い出されなくちゃいけないの!」
「べつに、追い出したわけじゃ……」
「あんなの追い出したも同然ですっ! 理由も教えてくれないし……怒るに決まってるでしょ!!」
スリッパのまま葵衣につめ寄り、
だんっ、と逃がさないようにドアに手をついた。
びっくりしたようすの葵衣を、あたしは至近距離からまっすぐ見つめる。
「葵衣があたしを追い出した理由話してくれるまで、絶対どかないから!」
「え……」
「話して!」