・
+
・
*
「……なんで、ここに」
少し遅めの時間帯に帰ってきた葵衣が、
玄関で待っていたあたしを見て、おどろいたようにつぶやいた。
あたしは真顔で、チャッと家の鍵をかかげる。
「鍵もってるからここにいるんです」
「いや、そうじゃなくて」
「自分の家に帰ってくるのは悪いことですか?」
棘のある声で言って、あたしは葵衣をにらみつけた。
あまり状況を理解していない葵衣が、まばたきを繰り返し、とりあえずドアを閉める。
「だって、拓海さんといっしょに……」
「ご心配なく! 拓海くんにここまで送ってもらいましたから」
葵衣、拓海くんのことさん付けで呼んでるんだ。
もしかして……あれから仲良くなったの?
ちょっと意外に思ったけれど、いまは重要じゃないので置いておく。