なにげなく振り返り、あたしはつい息を止めた。
「あ、羽山さんと小川さん」
視界に入ったのは、いまいちばん、あたしとみゆきにとって気まずい相手。
よりによって、葵衣と柊木くんだった。
葵衣とばちっと視線が合い、反射的にぱっと目をそらしてしまった。
な、なんでこのタイミングで……!
「こんなとこでなにしてるの? もうホームルームはじまっちゃうよ」
気まずい空気のはずなのに、柊木くんは気にするようすもなく笑った。
どうしてそんなに、ふつうなの?
みゆきの気持ちは気にもならないくらい……ささいなことだったの?
となりのみゆきが、とまどうようにうつむいたのがわかる。
ちょっとむっとして、ふたりこそ、と言い返そうとしたとき。
「或音。はやく行かないと遅刻になる」
葵衣はそっけなくそう言って、あたしたちの横をすっと通り過ぎた。