契りのかたに君を想ふ







ーーーーーーーーーーーーーーー





絵美「あぁ〜、緊張する!」




慶喜「今ならまだ帰れるぞ。帰るか?」




そう言ってUターンしようとする慶喜の肩をガッシリ掴んだ。



絵美「帰らないわよ!天皇陛下に会える機会なんて全くないんだから!」




そう、今日2人は孝明天皇に会いに御所へ訪れていた。





……………………………




天皇「其方が時渡りをしたと言う女子か。名を何と言う」




絵美「胡桃沢 絵美です」




天皇「ほう。して、何用か?」




絵美「はい。政に参加させて頂こうと思いまして。私、未来から来ているのできっとお役に立てると思います」




天皇「役に立つかどうかでなくお前は女子であろう」




絵美「女は政に参加してはいけないのですか?」




天皇「無論」




絵美「何故です」



天皇「女に政など出来るわけがないであろう」




絵美「未来では女子も政に参加しますよ?」




天皇「何と!女が政に加わるとは…世も末だな」





んの野郎。


女を何だと思ってやがる!!!




絵美「女に政が出来ないと決めつけるのは感心しませんね」




天皇「……………」




絵美「まぁ、この時代の女は藩校へ行かないのでそうかもしれません。ですが私は?ここにこの時代の知識が全て入ってます。敵の情報もこちらの情報もね」




そう言って自分の頭をツンツンと叩いた。





天皇「何!敵の情報も!ならば今すg…」




絵美「敵の情報は一切教えることが出来ません」




天皇「何故」




絵美「敵の中にはとても頭の切れる者が数名います。彼等は幕軍に必要です。ですから私が時間をかけてゆっくりと長州の素晴らしさを天皇と慶喜に教えてあげます」




天皇「結構だ。それよりもお前は長州よりの人間なのか」




絵美「いえ、中間です」




天皇「どういう事だ」




絵美「私は新撰組の人間です。ですから幕軍に全面的に協力をします。しかし長州にはとても素晴らしい者がいます」




天皇「嫌しかし長州の良さは全くと言って分からぬし分かりたくもないないな」



絵美「まぁまぁ、いずれ長州が欲しくて欲しくて堪らなくなりますから」




天皇「ふんっ。もしも儂がそうなればお前の政への参加を認めよう」




絵美「っ!俄然やる気が出ました!!!まずどこから話して欲しいですか?」




慶喜「どこからも何も俺らは奴等の良いとこを知らないだろう」




絵美「……そうでした。失礼」




ん〜、どこから話したら良いかな。




難しいなあ…。




桂小五郎、高杉晋作、吉田稔麿、久坂玄瑞、坂本龍馬、中岡慎太郎、西郷隆盛…と長州だけでなく土佐や薩摩などの素晴らしいところもついでに語ってくか。









絵美「じゃあまずは長州藩士の桂小五郎から語りましょうか」




慶喜「まずは…って一体何人語るつもりだ」




絵美「ん〜、長州だけで4人、土佐藩士2人だから6人くらい?後薩摩の大切さも知って貰いたいから西郷さんとかも!だから7人かな」




私がそう言うとまだ話し始めてもいないのに天皇と慶喜の顔がゲッソリしていた。





天皇「な、7人…。ならば1日に1人だけ語ってくれ。儂も考える時間が必要だ」




絵美「そうですか…、仕方ないですね。じゃあ早速いきますよ!まず長州藩士の桂小五郎は何と言っても強い!新選組の局長、近藤勇までもが震え上がる程の剣豪です。しかし彼は逃げの小五郎と呼ばれていますよね?何故だと思います?」




天皇「本当は強くないのであろう」



慶喜「あぁ。只の弱虫なんだろ」



絵美「違います。彼は無駄な血を流すまいと敵から逃げるんです」




慶喜「要するに人を斬るのが怖いのだろう」




絵美「だから違うってば!彼はちゃんと命の重さを分かっているの」




天皇「お前何故そこまで詳しいんだ」




桂小五郎について熱く語っていると不思議そうに問われた。




絵美「未来では女も藩校へ通うんです。そこで幕まt…いえ、江戸時代の歴史を習ったときに何故幕軍と長州が戦っているのか、その戦の首謀者は誰か、参戦しているのは誰か…沢山のことを学ぶんですよ」




危ない危ない。




うっかり幕末って言っちゃうところだったわ。




天皇「ほう?なら未来の女子は皆賢いのか」




絵美「う〜〜〜〜ん……、まぁこの時代の人よりは賢いかもしれませんね」





慶喜「でも歴史だけしか出来なかったりしないよな?」




ニヤニヤ顔でこちらを見てくる慶喜。




髷を切り落としてやろうか。




絵美「そんな事ないから。私、英語喋れるし」




天皇「それは誠か!!!」




絵美「はい、もちろんです」




慶喜「お前…見かけによらずに……」




天皇「よし、これからお前を政に参加させよう」




絵美「え、でもまだ長州の…」




天皇「良い良い、他国の言葉を話せる者などそうそうおらん。お前がこれから必要になる」




絵美「っ、ありがとうございます!!私これから頑張ります!!」










天皇「お前、他に得意な事はないのか」



絵美「あります!剣術、忍術、柔術が物凄く得意です!後、銃も扱えますし乗馬も出来ます。まぁ体を動かす事なら出来ないことはあまりないですね」




天皇「………女子とは思えんな」



慶喜「コイツ、剣術、忍術、乗馬、銃を四月で上達したんですよ。剣術なんて免許皆伝です」




慶喜がそう言うと天皇は目玉が溢れんばかりにかっ開いている。





天皇「儂は相当素晴らしい者を手に入れたようだな」




絵美「あぁ、そうだ慶喜。私暫く新撰組に帰りたいの」




慶喜「何故だ」




慶喜の問いかけにニヤリと怪しく笑う絵美。




絵美「これから新撰組が大手柄をたてるの。私はそれを側で見守りたい」




慶喜「……二条城から陰ながら見守ってやれ」




絵美「ダメダメダメダメ!これは本当に譲れない!」





慶喜「では、俺たちはそろそろ失礼致します」




絵美「こらっ!人の話を聞きなさい!」




慶喜「ほら行くぞ!」




そう言って私の首根っこ掴んで引きずる慶喜。




絵美「離してよ〜〜!!!あ、孝明天皇また来ますね〜!さようなら!」





スパンッ




天皇「じゃじゃ馬じゃな」





……………………………………






あれから半強制的に二条城へ連れ戻された私。





スパンッ



ペイッ




私の部屋に着くなり捨てられてしまった。




絵美「いったい……わね!」



慶喜「で、これから起こる事は長州が関わっているのか?」



絵美「そうよ。新撰組が沢山殺すの。でもね、中には死んではいけなかった人もいるの。だからそれを阻止しないと」



慶喜「お前は…」




絵美「でもそれだけじゃなくてね、新撰組でも殺される人がいるし深傷を負う人も出てくるから」




私がそう言うと慶喜は溜息を一つ吐いて私の顔を覗き込んだ。




慶喜「それが終わったら戻ってくるのか?」





絵美「……………」





そんなの分からない。




私の計画が上手くいって深傷を負う人がいなければ直ぐに戻って来ることができると思う。




でも、そう簡単に歴史は動かない。




約束も出来ないのに頷くことなんて出来ない。





絵美「……分からない。私の計画が上手くいけば直ぐに帰れる。でも失敗したら…」





慶喜「…………ならこうしよう。1年だけお前に猶予を与える。その間に全てを終わらせてここへ戻って来い。呑めるか?」




絵美「…………、分かった」



慶喜「よし、早速新撰組の者に連絡をしておく」



絵美「あ、サプライズにしたいから言わないで!」



慶喜「は?」



絵美「あぁ、驚かせたいから!」




慶喜「分かった」




そう言うと慶喜は私の頭をクシャッと撫でて私の部屋から出て行った。




私は一人になってしまった部屋の窓?みたいなものを開けた。



未来とは違って澄んだ空に数千億の星屑達。




絵美「……はぁ。私は元々新撰組なのに…」





私の切ない独り言は誰にも聞こえることなく冬の寒空へと消えていった。











スパーーーーーーンッ!!!!




土方「襖は静かに開けやがれ総司!!!!………じゃねえ…絵美!!お前いつ帰ってきたんだ!!!」




絵美「ふふふ、只今戻りました土方さん」




バタバタバタバタバタバタ



スパーーーーーーンッ!!!!





幹部「絵美!!!!!」




絵美「みんな!!!」





近藤「絵美ぃぃぃい!本当に済まなかった!!お前がいない生活など考えられない!もうこんなことはしないからどこにも行かないでくれ!!!!」




山南「よく戻ってきてくれましたね」



土方「ったく…待ちくたびれたぜ」



沖田「絵美さん遅過ぎます!!」



永倉「お前がいないとつまんねぇんだ」




斎藤「お前が帰って来てくれて嬉しい」




井上「お帰り、絵美」




藤堂「俺、お前がいなくて寂しかった」




原田「もうどこにも行くな」




山崎「ずっとお前が戻るのを待っとった」




絵美「みんな…ありがとう!でも、1年経ったらまた二条城に戻らなきゃいけないの。だから1年しか居られないけど…また置いてくれたら嬉しいな…」




たったの1年。



期限付きの私を彼等はまた置いてくれるのか。




少しの不安が過るがそんな不安は彼等の言葉でアッサリと消え去った。




土方「何当たり前なこと言ってやがる。お前の居場所は初めからここだろうが」




沖田「大体、ここ以外に居場所なんて作らせませんから!」



藤堂「絵美は俺達新撰組の仲間だもんな」



原田「余計な心配してんじゃねぇよ」




絵美「こんな私をまた受け入れてくれてありがとう。私、これからは隊士として一生懸命働いて新撰組に貢献するね!」



幹部「嫌、お前は隊士にならなくて良いから」




絵美「何でよ!」




土方「お前みてえな未熟者は使えねえ」




絵美「ほぉ?言いましたね土方さん。後悔しますよ」




土方「ほざけ。なんなら勝負してやるか?」




絵美「もちろん。売られた喧嘩は買いますよ」




土方「上等だ。よし、お前等も道場着いて来い!!」









そう言って私達は道場に来た。




土方「木刀で良いんだろう」




絵美「なんだって良いわよ」




土方は私の返事を鼻で笑うと構えた。




そして私達は同時に動き出した。





山南「あれは…甲源一刀流……」




藤堂「絵美は、神道無念流だったよな?」



永倉「アイツ…相当強くなってるな」




沖田「はい。それに皆さん気づきましたか?彼女、気配が無いんですよ。全く」




山崎「気配だけでなく足音もまるっきしない…」




原田「ありゃあ、相当二条城で厳しい稽古を積んできたんだな」




斎藤「副長と互角に戦えている。いや、あれはもしかすると副長よりも…」




土方「ほお?姫さんは暫く会わねえうちに随分と強くなったみてえだな」




絵美「そりゃあ、甲源一刀流免許皆伝を頂きましたからね」




土方「なにっ…!」



絵美「隙あり!!!!」




私はそう言うと土方の銅目掛けて竹刀を振り下ろした。





パァァァァン





絵美「やったぁー!」




土方「この俺が…負けた……」




山南「絵美、一体何故そこまで強くなったのですか?」




うんうん、と幹部一同首を縦に振った。



絵美「私、じっとしてられなくて二条城で剣術を習いたいって言ったんですよ。そしたら剣術以外にも忍術や乗馬、銃等の稽古を一日中やらされていたんです。そのお陰で先日、免許皆伝を頂きました!」




幹部「………………」



絵美「え、何で黙るの?」




斎藤「絵美、俺と手合わせしてくれ」



絵美「え、嫌だ」



斎藤「何故」




絵美「だって撃剣師範だよ?私殺されちゃう!」



斎藤「安ずるな。手加減はする」




絵美「それに私一試合して疲れてるの!」




斎藤「構わん」




お前はな!!




お前は構わないだろうな!!!




だが私は構う!!!!!





山南「そう言えば斎藤君も甲源一刀流でしたね」




近藤「面白い!始めよう!!」





絵美「…………………」





近藤勇よ。




あの日私に言った『お前のことは娘のように思っている』は嘘だったのですね。



父親なら娘が疲れているのを察して休ませろ!!!!!!!!!




そして山南さん、貴方まで。




絵美「だぁ!!!もう!!やれば良いんでしょう、やれば!!大体、帰ってきたばかりなのに幹部と二試合もさせるか!!!ここの男共はどいつもこいつも……ブツブツブツブツ」




藤堂「絵美、帰って来てから口調変わってると思うのは僕だけ?」




永倉「嫌、俺もだ。アイツはもっと可憐で清楚だった筈だ」




原田「まぁ、免許皆伝を取ってるくらいだ。女を捨てる勢いで稽古をしていたんだろ」




沖田「まぁ僕はどちらの絵美さんも好きですけどね」



藤堂「好き!?それはどういう好きだよ!!」




沖田「女の子として好きと言う好きですね」




藤堂「総司も絵美の事が好きだなんて…俺勝てる気しないな…」




沖田「一君や土方さんも絵美に想いを寄せてますからね」




藤堂「左之さんや新八さんもだよ…」




山崎「因みにわいもな!」




沖田「別に山崎君は敵視してないよ。だって君は仕事が忙しくてあまり絵美さんに近づくことがないからね」




山崎「そないなひやこい事言わんくてもええやろ!」




藤堂「俺もあんまり敵視してないな。問題は土方さんと左之さん!」




沖田「あの二人は組の中でも1、2を争うくらい女子から人気がありますからね」




藤堂「まぁ左之さんは頭が悪いから絵美が選ぶことはない」




沖田「分かりませんよ。いつ何が起こるか分かりませんからね」











沖田と藤堂がそんな話をしていた事を試合している絵美は知らない。




絵美「ゼェ、ハァ、ゼェ、ハァ…一……強すぎる……」




斎藤「お前も四月でここまで強くなるとはな」




絵美「褒めてるの?」




斎藤「あぁ」




もう疲れたから絶対に次で終わらせる!




一か八かの勝負!!!




運が良ければ勝てるかもしれない!!




そう言って私は高く跳ぶと一目掛けて竹刀を振り下ろした。




パァァァァァンっ!!!!














斎藤「まぁまぁだな」



勝ったのは斎藤だった。




絵美「悔しいーーーーー!!」



斎藤「…………まぁ、女にしては強いのだろうな」




絵美「………さようですか。でも負けているので褒められてもあまり嬉しくはありません」



斎藤「そうか」




斎藤一め……。



いつか絶対に倒す!!!!!



私はそう心に強く誓ったのだった。




絵美「一!!!いつか必ず倒すっっっ!!!」



斎藤「…そうか」



絵美「何この温度差…」



斎藤「さあな」





コノヤロ。



私がこんなに燃えているというのに……。



涼しい顔しやがって。





藤堂「絵美!お疲れさん!」



はん!!



何この可愛い笑顔は!!!!




正に癒し!!!!




絵美「ありがとう、平助!」



原田「いやぁ、しかしお前も強くなったな!」



そう言って大きな手で私の頭を撫でてくれた原田。




絵美「そうだ!土方さん、私を隊士にしてくれますよね?」



土方「………この件については俺一人で決められることじゃねえ。近藤さんと山南さんと話し合う」



そう言うと近藤、土方、山南は道場から出て行った。




永倉「何でお前は隊士になりてえんだ?」



絵美「だって折角ここまで鍛えたんですよ?それに、みんなの側にいられたら安心でしょう?」




藤堂「でも俺…もし絵美が斬られたりしたら……」




絵美「平助……。でもさっきの試合見てくれてたでしょう?幹部の人と互角…って言っていいのか分からないけど、兎に角戦えてた。だから大丈夫!」




藤堂「でも…」




沖田「まぁ、絵美さんが大丈夫と言っているんですから大丈夫でしょう」




永倉「そうだな。何かあれば俺が守ってやるから」




原田「"俺"じゃなくて"俺達"だろ?」




斎藤「そうだな。何かあれば俺たちがいる。それにあれくらい強ければ大丈夫だろう。己の信じる道を行け」




絵美「みんなありがとう」








………………………




土方「どうすんだよ」




山南「あれほど強ければ絵美さんの申し出を断る理由がありませんし…」




近藤「俺は…絵美を隊士にしても良いと思うがな」



土方「おいおい、近藤さん。真面目に言っているのか?」



近藤「あぁ。免許皆伝だぞ?それに彼女は新撰組の役に立ちたがっている」




土方「だが…アイツは目立つ。長州の奴等に気に入られたら終わりだぞ」





土方がそう言うと近藤は何か閃いたかのように目を大きく開けた。




近藤「ならば監察方なんかどうだろう?絵美は二条城で忍びの稽古もやらされていたようだし」




山南「…良いかもしれませんね。顔も隠れますし目立つことはないでしょう」




近藤「これなら良いだろう、歳」




土方「チッ…わあったよ。アイツには忍びになってもらう」




山南「そうと決まれば早速彼女を呼びましょう」




土方「山崎っ!」



シュタッ!!!!




土方「聞いてたな?」




山崎「絵美を連れて来るわ」




土方「頼んだぞ」



山崎「御意」



シュタッ!!!!




……………………





スパンッ


絵美「失礼します!」



土方「はぁ…、お前は相変わらずだな」



絵美「人間そう簡単に変わりませんよ」




土方「…フッ。そうだな」





ゴッホン



そう咳払いをして先を急ごうとするのは我らの局長、近藤勇。



近藤「絵美、お前の処遇が決まった」




緊張で背中を汗が伝うのがわかった。




近藤「お前にはこれから……














…………監察方になってもらう」














あぁー、監察…方……ね……



……ってえぇ!?



絵美「隊士じゃなくて!?」



土方「何だ?不満ならそのまま…」



絵美「やります!!やります!!やらせてください!!!」



山南「ではこれから絵美さんは山崎君に着いて忍びの稽古をしなさい」



絵美「分かりました!胡桃沢 絵美、精一杯頑張ります!!!」




そう言って彼等に敬礼をした。




彼等はきっと敬礼が何なのか分かっていないだろうが優しく微笑んでくれていた。









ーーーーーーーーーーーー



山崎「絵美、早う起きい!」



絵美「んー……」




私を真夜中に起こすクソ野郎は山崎烝。




絵美「何なのー……?」



山崎「試験や」




絵美「…しけ…ん…ね…zzZ…」




山崎「…………………」




ベシッ




絵美「…った!!!」





…………………………





山崎に叩き起こされた絵美の額の中心部分はほんのりと紅く染まっている。



絵美「手加減なしだもんね…」



おでこを摩りながら山崎を睨みつける絵美。




山崎「早う起きん絵美が悪いんや。わいは何も悪くない」




コノヤロ…。





絵美「で?試験って何するの?」




山崎「今日は遊郭に長州浪士がぎょうさん集まってるさかい情報収集や」




絵美「ま、まさか…」




山崎「そうや。絵美には遊女の格好をしてもらう」




絵美「やっぱり…。私、廓言葉話せないよ?」




山崎「見様見真似で何とかやってくれ」




絵美「そんなあ…」




…………………………………





君菊「とぉっても綺麗どすなあ」





絵美「…ぁ…あ……これが…私?」




君菊「そぉや。これなら天神なみやで?」



絵美「…み……醜い…っ……」





君菊「失礼な子やね。うちがせっかく化粧してやったのに…」



絵美「あ、ごめんなさい。そうじゃなくてお化粧は綺麗なんだけど私に似合ってないな…って……」




君菊「あぁそうかい。どっちの言葉もうちは傷付くけどな」




絵美「着物も重い。鬘なし?」



君菊「あんさんみたいな髪は隠さなあかんから鬘は必要に決まっとる。着物は我慢しい」



絵美「私本当に大丈夫かなぁ……はぁ…」



君菊「(この子鈍感にも程があるやろ。こない綺麗な顔しはってるのに…うちに喧嘩売っとるんか)ほな、行きまひょか」



絵美「はぁーい」




君菊さんに連れられて私は長州浪士達の元へと足を進めた。




今夜は長い。










スーーーー




君菊「君菊どす」



な、名前考えてない!!!



どうしよう…えーっと……















絵美「う、梅どす」



お梅さん、少しお名前借ります。




「おぉ〜上玉〜」



そう言って酔っ払いに肩を抱かれる私。



絵美「(気持ち悪いな。その薄汚い手を退けやがれ)お晩どすぅ。あんさんお侍さんなん?」



高杉「そうだ。俺は長州藩士、高杉晋作っつうの。覚えといてくれ」




い、いきなりお偉いさん来たーーーーー!!!




絵美「長州のお方なん?うち、長州のお方にお会いするの初めてなん。嬉しぃなぁ〜」





だ、ダメだ。



全っ然廓言葉じゃない!!



仕方ない、気合いで乗り切るか!!!!




高杉「そうかぁ?じゃあ色々語ってやろう。でも……壬生狼の回し者に色々話しちゃ俺の身が危ねえか」





い、今コイツ何言いやがった?




絵美「壬生狼の回し者?どこにいるん?」




高杉「お前だ馬鹿野郎」





絵美「え"…」




何コイツ。



私達初対面の筈ですけど。




初対面の人に馬鹿野郎?




って、そんな事言ってる場合じゃない!!




絵美「や、ややわぁ高杉はん。うちが壬生狼の回し者?」



高杉「お前、アレだろ?一橋慶喜公に気に入られていた時渡りの女だろ?」




絵美「…時渡り?そんな事出来るお方がいるんどすか?」




高杉「あぁ。俺の記憶が正しけりゃそいつの名前は胡桃沢 絵美。黄金色の髪をしていて四月で免許皆伝を取得したらしい」




絵美「お強いんどすなぁ」




な、何故。



私の情報が長州に!!!




絵美「なんで彼女を知っとるん?」



高杉「噂だ。先の世から来た女子だからな、長州に置いておきてえよな。壬生狼のとこに置いといちゃ勿体ねえ」




ギュッと高杉が私の方を抱く腕に力を込めた。



高杉「お前なんだろう、胡桃沢 絵美は」




絵美「………どうして私を知ってるの」




高杉「言っただろ、噂だ」




絵美「噂だったら私の顔を知らないはずよ」




高杉「………お前、中々賢いな」




奴はフッと笑うと力を緩めた。




高杉「お前の廓言葉が破滅的だったのと、この時代ではあり得ないくらいの美貌の持ち主だからな」




何だコイツ。




目ぇ腐ってんのか!




気持ち悪い!!!




絵美「見え透いたお世辞言われても嬉しくないから」




高杉「フッ。黄金色の髪…見せてもらおうじゃねえの」




そう言うと高杉は私の鬘をとった。




絵美「何をっ…!」





光の速さで高杉から鬘を奪い返し頭に装着したが時すでに遅し。




ここにいる大半の長州藩士に私の髪を見られてしまった。




高杉「お前はもう逃げらんねえ。俺と共に長州に来い」




絵美「ふざけんな。誰が行くか!!」




「お前!!高杉先生に何を言う!!」



「高杉先生の言う通り、長州に来るんだ!」



絵美「誰が行くかタコ!私は新撰組なんだ!てめえら雑魚のとこなんか行けっか!!」




「何をぉ!!」




怒りに震えた長州藩士達はいよいよ抜刀してしまった。




まずい。




逃げなきゃ!




私は窓?を勢いよく開けると二階から下へ飛び降り、路地裏へ駆け込んだ。