契りのかたに君を想ふ






スパンッ




絵美「総司!!!」




そこには顔に布を被せられた総司がいた。





絵美「…うそ……でしょう?総司…起きて!起きてよう……!!!」




私は総司に縋りついて泣いた。




とても大きな声で。





土方「出血があまりにも多すぎて…」





みんな顔を隠しているが肩が震えている。





絵美「何で…よ……っ……」





私が歴史を変えたから?





私のせいで総司が死んだの?





私が深い悲しみに包まれていたその時、








沖田「………ぷっ…!」





絵美「………え?」




古株「ゲラゲラゲラゲラゲラゲラ」




絵美「え、ちょ、待ってよ、どういうこと?」



完全に私は今パニック状態だ。




突然死人が笑い出したかと思ったら部屋中の人間が笑い出した。




総司「あっはっはっはっは!絵美、本当に面白いですね!そんなに私のことが好きですか?安心してください、私は生きてます!」




原田「こんなに笑ったのは凄い久しぶりだ!」




漸く騙されたことに気付いた私は顔に熱がたまった。




絵美「……………殺してやる」




全員「え…」




絵美「全員ぶっ殺してやるーーーーーっっっっ!!!!!」




古株「ぎゃーーーーーーーーーッッッッッ!!!!!」




その後、古株は全員絵美にボコボコにされたのだった。




局長、総長、副長までもが。








ーーーーーーーーーーーー





絵美「暇だなぁ〜」



休暇を頂いて3日が過ぎた。



幹部のみんなは巡察やら稽古やらで忙しく、総司はまだ背中の傷が塞がっていないので絶対安静。




絵美「もう。大体2週間も何してろって言うのよ!!暇で暇で暇で暇で死にそうだわ!!」




斎藤「何一人で騒いでいる」




絵美「一!巡察お疲れ様!」




斎藤「あぁ。これ、お前に買ってきた」




斎藤に渡されたものは桜色をした紅だった。




絵美「可愛い!ありがとう!」




斎藤「お前に似合うと思ってな」



絵美「ふふふ。一は優しいね」



ニコッと斎藤に向かって微笑むとフイッと顔をそらされてしまった。




斎藤「俺は副長に巡察の報告に行ってくる」




絵美「行ってらっしゃい」




斎藤の耳は仄かに赤くなっていたが絵美は気づかないふりをした。





絵美「暇だし、お茶淹れようかな」




私は4人分のお茶を淹れると近藤、山南の部屋へ届けに行き、最後に土方の部屋へ向かった。





スパンッ




絵美「土方さ〜ん!」




ポイッ




絵美「いって」




土方「馬鹿野郎!墨が垂れただろう!!」




土方の投げたくしゃくしゃに丸められた半紙は見事、私の額にクリーンヒットした。





絵美「ごめん、ごめん」




適当に謝り持って来たお茶菓子と少しぬるくなったお茶の入った湯呑みを2つ並べた。





土方「おい、何を始めようとしてる」





絵美「え?お茶会」




ガコンッ




絵美「いったい!!!」




土方「何で俺の部屋でお茶会始めんだよ!!」




絵美「いや〜、土方さん最近随分とお疲れみたいだし私も暇で暇で仕方ないからここでお茶会したら2人とも楽しめるじゃん?一石二鳥よ!」





土方「意味わかんねー」





絵美「まあ良いさ。さあ、お座り」




土方「俺の部屋だけどな」




文句を言いつつも一緒にお茶会を始める土方。









絵美「ねえ、私明日からお仕事復帰しても良い?」




土方「なに馬鹿なこと言ってる。折角俺が休暇をやったんだぞ?素直に休暇を楽しめよ」




絵美「いや〜、私休暇をもらってもする事なくてさ。暇で暇でつまんないのよね」




土方「変な奴だな」




絵美「私じっとしてることが嫌いでさ…」




土方「こっちからしたらじっとしていてくれた方がありがてえんだがな」




絵美「どういう意味よ」




土方「…別に……」





ギロっと土方を睨むと大人しくなった。



絵美「ねえ、土方さん」





土方「あ?」




絵美「もしも自分だけが未来を知っていて…それが良いことばかりでなかったら……、如何なる代償が必要でも仲間の為、近藤さんの為に歴史を変えられる?」




私がそう聞くと少し考えるそぶりを見せ、彼は口を開いた。




土方「俺は新撰組、副長だ。代償がなんだろが同志の為なら何だってやる。大体、歴史なんざ気にしねえ。未来に伝わってる歴史はハッタリかもしんねえだろ?俺は俺なりのやり方で近藤さんたちを勝利へ導くんだ」




不覚にもカッコイイと思ってしまった。




絵美「そっか、そうだよね。歴史なんて一々気にしてたらキリないもんね」




土方にはそう言ったもののやはりこの池田屋事件までしっかり未来に伝わる歴史通りだ。



きっとこれから先も全てのことが歴史通りに動くはず。



慶喜を味方にしておいてよかった。




何かと動きやすい。



慶喜は私には甘いから何かやらかしても大目に見てくれるだろうし。



土方「お前、何かと1人で溜め込むんじゃねえぞ。ここは馬鹿ばっかだが頼りになる奴はたくさんいるんだからな」




土方さんもそう。



いつも私に甘い。



絵美「うん、ありがとう」










人を斬り、人の命の重みが分かちしさるほどにさらなる試練を与へむ。



敵対する彼らの元にお主がいかに動くや。
敵の悪しき箇所のみにあらず良き箇所も見つけて見るがよし。



お主の力を見てみむ。



先の世より来し少女よ、今こそ自身の力を信じこの世を清む。











あれから数月が過ぎ、辺りはすっかり秋に包まれていた。




土方「総司ぃぃぃぃい!!!またお前は"アレ"を盗んだのかぁぁぁぁぁぁあ!!!!」




沖田も背中の傷が治り元気いっぱいだ。




沖田「あちゃ〜、もうバレちゃいましたか」



あちゃ〜、じゃねえだろ。




そんな沖田は只今私と甘味を堪能中だ。





沖田「絵美さん、これ新作ですよ!」


絵美「えー、どれどれ見せて!」





" 知れば迷い 知らねば迷わぬ 恋の道 "






沖・絵「…………ぷっ」




何これ、ジワる。




沖田「ゲラゲラゲラゲラゲラ 何ですか、知れば迷い知らねば迷わぬ恋の道って!!!ゲラゲラゲラゲラケゲラゲラ」




沖田は笑い死にしそうな勢いだ。




ドタドタドタドタドタドタ





土方「ここかぁぁぁぁぁあ!!!!!!」




スパンッッッッッッッ!!





ガコンッ ガコンッ





沖・絵「ぎゃあっ!!」




土方から拳骨を頂き、只今2人で悶絶中。





絵美「土方さん…私なにもしてないじゃないですかぁ〜……」




あまりの痛さに涙目で土方を見上げる絵美。



土・沖「っっっっ//////////」




土方「そ、それはお前も一緒になって見てたからだろうが!!」




絵美「こんな面白いものが近くにあれば誰だって見るでしょう!!」



ガコンッ



…………………………。





絵美「いたぁぁぁぁぁあい!!!!」



土方「うるせぇ!!!」




おいコラ。


うるせぇとは何だ。



そう言いたいところだがもう反論する気力もない。



土方「お前ら罰として夕餉の買い出しに行って来い!!!!!」




沖・絵「そんな〜〜!」



土方「文句は聞かねえ、さっさと行け!!」










こうして町に出て来た私達。




買うものは


・お魚
・たまご
・たくあん
・かぶ
・豆腐




沖田「あ、絵美さん!みたらしと餅米がここにありますよ!」



お前はみたらし団子の材料を買いに来たのか?




私は聞きたくないことは基本耳に入ってこないから沖田の話は全く聞いてない。




えーっと後はお豆腐だけかな。



絵美「おじさーん、お豆腐下さ〜い!」



豆腐屋「おう絵美ちゃん!今日も元気だね!少しおまけしてやる!」




絵美「ありがとう!」




絵美の持ち前の明るさと笑顔でいつも買い出しの際、豆腐屋のおじさんだけでなく魚屋、八百屋までみんな安く売ってくれたり量を多めにくれたりするのだ。



その点、新選組は絵美に大助かりだ。




沖田「これちょっと多過ぎません?」



私はお豆腐しか持っていない。



絵美「しょうがないな〜。半分貸して?持ってあげるから」




荷物を取ろうとするとムスッとしながら逃げる沖田。



一体なんなんだ。




沖田「女子に荷物は持たせられません」




じゃあ黙って運べ。




なんて言わない。



思ってても言わない。




絵美「あっそ。じゃあ黙って運べ」





我慢できなかった。




沖田「それ酷くないですか!?」




あーあー聞こえない、聞こえない。




絵美「ほら行くよ」




後ろで何か騒いでるけど私には聞こえない。




ジャリッ



私達は互いに目を合わせると頷いた。




沖田「そこにいるのは分かっている!!今すぐ出て来い!!!!」




沖田がそう言うと浪士達がゾロゾロと出て来た。



沖田「何者だ!!」




浪士「胡桃沢絵美、お前を拐いに来た」



狙いは……私?




沖田「っっっっ!絵美、今すぐ逃げてください!!!」



逃げる?


そしたら総司が……。




いくら強い沖田でも20人あまりの奴らは倒せないはず。




絵美「一緒に、戦おう。私が10人斬るから総司は10人斬って」




沖田「いくら強い絵美でも無理です。今は着物ですし刀も持っていないでしょう!」




絵美「苦無がある」




私はそう言うと胸元から苦無を両手で取り出した。



沖田「はぁ。何言っても聞かなそうですね。私の背中は絵美に任せます」




絵美「任せて!私の背中はお願いね!」




沖田「はい」




私達は背中を合わせると同時に走り出した。










苦無は刀よりずっと良い。



人を斬る時の感触を感じずに済むから。



私達は次々と浪士たちを殺め、五分足らずで終わらせた。




私は総司と目が合うと微笑んだ。




絵美「総司の背中は守りきったよ」



沖田「僕も絵美の背中を守りきりました」




2人とも大分疲れていた。




絵美「帰ろっ……」




































言い切れなかった。














だって……

















ーーーーーーーーーーー何者かに口を手拭いで抑えられてしまったから……。




























沖田「帰りましょうk………!絵美!!!!」



沖田が振り返ったときには既に絵美の姿は消えていた。

























ーーーーーーーーーー



気がづきたときには、船の上だった。



絵美「う"ぅ…。気持ち悪ぅ……」



「手荒な真似をしてすまなかったな」



絵美「誰っ!?」


振り向くと一見、穏やかそうな顔つきの男。



どこかで見たことがある。




「君なら分かるんじゃないかな?」




一生懸命自分の記憶を辿って彼の顔を探す。





























はっ!!!!!!




絵美「桂小五郎!?」



桂「あはは、その通りだよ」



そうか。


教科書で見たんだ。








絵美「ここどこ?新撰組のところに返してよ!!」


桂「それは無理な話だな」



なぜ!!!!!!!




桂「君はこれから長州で預かる」





もう一度言う、なぜ!!!!!!





絵美「すいません、私は新撰組の人間です。返していただけないのなら私はここで切腹をします」




桂「それも無理な話だな」




だからなぜ!!!!!




絵美「もう!私はこんなところで死んでる場合じゃ……」




いや待てよ。



もしやこれは絶好の機会じゃないか?




長州に幕府の良さを知ってもらえばこっちのもんじゃ!!!!!





絵美「気が変わりました。しばらく私を預かってください。でもいずれ新撰組の元へ戻るということは忘れないでください」




桂「気が変わってくれて良かった。だが新撰組に返すわけにはいかないな」




うん、さっきから物凄い笑顔で話すのやめて。



反抗しずらいから!!!