「また遅刻なの?」
あたしは新宿の映画館真横にある
小さなカフェで呆れ返っていた。
「ごめんって〜本当にごめん。」
電話の向こうで平謝りを続けるのは
あたしの彼氏、幸太郎。
今日は9時15分から始まる映画を見る約束をして
大嫌いな歌舞伎町を歩き
待ち合わせには持って来いの映画館真横というカフェで待っていたのに
結局これか、、、。
急ぐようだけ伝え電話を切り
冷めきったホットミルクに目を落とす。
この待ち時間の退屈さと言えば
4年前のあの日に似ていた。
━━━4年前━━━
「絵留ちゃんの好きな男性のタイプはどんな人?」
先ほどから淡々と質問を投げかけ
答えを必死にメモしてるこのふくよかな女性は、
かれこれ2年はお世話になっている雑誌のライターさんだ。
「 ん〜。清潔でお金持ち! 」
あたしはなんの戸惑いもなくそう答えた。
質問されて答えて
この繰り返しをもう20分はしているだろうか。
内心では間違いなくこんな小娘の戯言など
聞きたくないと思っているんだろうけれど、
それが彼女たちの仕事だから仕方ない。
そしてこの座っているだけの退屈な時間も
あたしの仕事だから仕方ない。
10代半ばからひょんなことがキッカケで
あたしは雑誌のモデルやメディア露出を
するようになった。