「……てゆうか、ことちゃん何か知っているの?善が今夜しようとしてること。」


「あぁ、まぁな。…なんだ?イチ、知りたいのか?」


「や、別に。」


即答したあたしに、まるで答えが分かっていたかのようにそうだろうな、と返される。気にはなるけれど、特に知りたいとは思わない。単純に、どうでもいい。


あたしは善に合わせるだけで、そこに疑問はない。全面的に信頼しているっていうのも違うけれど、善だから良いと思っているのかもしれない。


善だから、危険な目に遭わされようが構わない。率直に言えばそんな、危ない信頼。
もしかしたらこれは、信頼とは言わないのかもしれないけれど。


善はあたしに関して過保護な面もあるし、そもそもあたしが傷付くのを嫌がる。
彼はいつだって、大袈裟なくらいにあたしの安全と幸せを優先して動く。


たまにそれが、虚しくなる……。















お昼ご飯をことちゃんと一緒に食べて、授業があるからとことちゃんは行ってしまったのに対して、あたしは放課後までずっと寝ていた。勿論、教室には一度も行ってはいない。


頭が痛くなって起きれば、持病である偏頭痛に襲われて眉を顰めた。あー、やだなこれイライラする。何も考えたくない、とてつもなく誰かに寄り掛かりたい。


薬を鞄に入れているのを思い出して、内心で舌打ちする。仕方が無い。のっそりと身体を起こし、部屋を出る。
何とか鍵を締めて廊下をフラフラ覚束ない足取りで歩く。


………教室に辿り着いたあたしは、見知った顔を見つけて目をパチクリさせた。
生徒の殆どいない教室にいたのは、数人の男子生徒。部活動生以外の生徒は、速やかに下校していたけれど、どうやら彼らは違ったらしい。


「……何してるの?ゆーだい。」


僅かに掠れた声で聞けば、四人の男子生徒の内の一人、ゆーだいが笑顔を返してくれた。うん、やっぱり彼の笑顔は癒される。