だから、あたしとこうして知り合ったみーくんは特別。必要以上にお互いに干渉せず、決して浅くもなければ深くもない不安定な距離感。


いつもの分かれ道まで歩いて、みーくんとあたしはいつものように分かれた。
みーくんは中学校へ、そしてあたしは未だに通い慣れた感の無い高校へ。


この時既に、お昼前を回っていた。















…学校は好きじゃない。けど、此処に来れば良いこともある。派手だけど優しい先輩にはお菓子を貰えるし、すれ違う同級生達にはジュースやお菓子を貰える。


名前も知らなくて話をしたこともない人達だけれど、優しさは素直に受け取る。
いつものように両手にお菓子を持ったまま口にはキャンディを咥え、通い慣れた感の無い1年C組の教室に入る。


昼休みらしく、ザワザワしていた教室が一斉に静まり返る。気にせずてくてくと窓際の真ん中ら辺の椅子に座る。
良かった。席替えはしていないみたい。


「……珍しいね。イチちゃんが学校に来るとか。」


最初に声をかけてきたのは、前の席に座る爽やかな男子。名前……何だっけ?
たまに話す程度だけど、印象ないや。


そんなあたしの失礼な疑問が伝わったのか、爽やかな男子は苦笑を浮かべる。


「おれ、仙波 雄大。イチちゃんとは中学も同じだったんだけど。」


あぁ、そういえば。中学の頃から何故かイチと呼ばれていた。
市河 夜凪という名前は、あまり知られていなかった気がする。


あたしは爽やかな男子……仙波 雄大と中学が同じだったらしいけれど、残念ながら覚えがない。そもそも、中学時代も今同様に殆ど学校へ行っていなかった。


「相変わらず、人気者だね。」


あたしの持つお菓子達を見ながら、どこか楽しげに雄大くんは言う。社交辞令にとチョコレートを一つあげた。


「人気とは違うと思うけれど……。」


「でも、イチちゃん人気者だよ?うちのクラスにもイチちゃんのこと気になってる奴らって多いし。」


「………ふぅん、そっか。」