みーくんとは登下校中にばったり会って寄り道したりする以外、休日や待ち合わせをして遊んだりする事も無い。
親友だっていうのもあたしが勝手に思ってるだけで、みーくんがあたしをどう思ってるかなんてのも知らない。
けど、他人という程に冷めた関係でもないと思う。寧ろ、あたしの中でのみーくんの存在は結構大きかったりする。
「久しぶりだね、みーくん。」
「その呼び方やめてくんない。」
ギロリと効果音が付きそうなくらいの眼力で睨まれた。けれど迫力はあっても凄味はないから可愛げがある。
あたしはみーくんと並んで歩きながら、テキトーに鼻唄を歌う。無表情ながらに気分が良いのはきっと、みーくんに会えたからだ。
「…あんたってホント自由だよね。」
口調に切望の音を聞き取りながら、あたしは薄く微笑む。
よく人の心が読めるのだと勘違いされるけれど、それは違う。
あたしはただ、その声音の音から感情が伝わってくるだけ。それに加えて洞察力が良いらしく、人の顔色をよく見てしまう。
それはもう癖のようなもので、意識しないようにしても無意識的にやってしまう。過去に人付き合いを拗らせたのも、この不気味な癖が原因だったりする。
気付かないフリは得意だ。
特に、こういう音を聞き流すのは。
みーくんの言葉に聞こえなかったふりをして、あたしは鼻唄を続ける。
ホッとしたような複雑そうな表情を一瞬浮かべて、みーくんはいつもの生意気そうな表情に戻った。うん、これで安心。
良くない事をしているのだとしても、あたしはあたしの世界を守りたい。だから使えるものは最大限に使うし、それを悪いとも思わない。
ただ、少しの罪悪感はあるけれど。それだってあたしの世界を守るためなら瞬時に消え去る。そういう冷徹な女なんだ、あたしは。
「……あー、歌えないんだった。」
「またシスコン兄貴を怒らせたわけ?」
唐突に言うあたしの性格に慣れているみーくんは、当たり前のように呆れて返してきた。見当違いの意見に無表情に頬を膨らませたみた。
一瞥されて鼻で笑われた。恥ずかしい。