勉学には不得手なあたしにしてみれば羨ましい限りだ。
学校だって、出来れば行きたくない。中学時代に引き続き、不登校気味なあたしだったけれど近頃は登校している。本当に嫌々だけれど。
善は無理しなくて良いと言うけど、煩いのが1人いるから。その人との賭けに負けたあたしは、登校を余儀無くされているのだ。
本当に、嫌々、仕方なく…だ。
「…………はぁ…。」
小さく、けれども重々しい溜息が漏れた。思ったよりも疲れているらしい。
学校という所は、どうにもストレスを感じてならない。
キリキリと痛む胃に加え、鈍い頭痛まで襲ってきた。
何てことだろう。精神的なストレスは、すぐに肉体的なものに影響を及ぼす。
胃薬を飲んで、頭痛薬を鞄に入れる。
それと、好んで飲んでいるパックのロイヤルミルクティー。
よし、これで準備万端だ。
制服の下に着込んだパーカーのフードを深く被り忌々しい陽光を遮断。今度こそ本当に、あたしは恋しい家を出た。
……家を出てしばらく歩いていると、見知った後ろ姿を見つけた。そっと足音を立てないように近付き、あたしと同じくらいの背丈の人物にのしかかった。
「やあ、おはよう。みーくん。」
「…いちいち抱き付いてくるなよ。」
残念ながら、あたしがいた事はお見通しのようで冷たく返された。
黒のブレザーを着崩していて、長い前髪から覗く淡いブルーの瞳に、左耳に三つと右耳に二つのピアス。
目つきも悪いから見るからにヤンキーくんの男の子。男の子、といっても彼はもう中学二年生だ。
彼とは小学六年生の頃に知り合った。今はもうあの頃とは見違える程に背が伸びた。
態度が大きいのと口が悪いのは変わらずだけれど、あたしの数少ない親友だ。
善も知らない、あたしだけの親友。
中学が同じというわけでもなく、共通の知り合いがいるわけでもなく、毎日連絡を取り合っているわけでもない。
薄いといえば薄い、あたし達の不思議な友情。