中では食事やらお酒やら、騒がしいったらない。けれども、あたしと善を見ると彼らは驚愕を浮かべて静観する。
……不自然な、沈黙。
二階のとある一室。
そこだけが別の空間のように、奇妙な緊張感と威圧感を漂わせる。善は部屋の前で足を止め、あたしの手を握る力をギュッと込めた。
だからあたしも、絶対に離れないという意味を込めて握り返した。
あたしは、この先に何があろうとも善に従うだけ。彼だけが、あたしにとっての絶対的存在だから。
◆◆◆◆◆◆
部屋の中には、三人の男がいた。
フードを被ってるから顔はよく見えないけれど、一人だけ明るい髪色をしているのが分かる。色白で、まるで日本人には見えない。
彼らは、何も言わずただこちらを見つめているだけ。善とあたし、そして美岬は彼らの座る場所まで行く。
何故か、一斗と和磨はそこから離れた場所で立ち止まった。
まるで、それが当然であるかのように。
なんて規律の多い面倒な場所…。そう思いつつも、その規律は必要なものなのだから仕方が無い。
「…遅くなっちゃって悪いねー。……柊、お前が会いたがってたイチちゃんご登場だよ〜すげぇ可愛いの。」
美岬の言い方に最早呆れしか抱かない。さっきも言ったけれど、美岬に素顔を見られた覚えはない。何の根拠もなしに言われたくないけれどまあ、いいか。
いつものように、ただ流れに身を任せることにした。面倒なのは嫌いだし、人が何を言おうがしようが構わない。
善は非難がましく美岬を制した。
こういうところが、あたしと善の価値観の違いでもある。
善は、あたしがどうこう言われたりされたりするのを極端に嫌がる。
あたしが特段嫌がっていなかろうが、無関心を示していようが、まるで自分の事のようにしてそれらを拒む。
例え美岬だろうと、善は許し難いらしい。