「ちょっと遊んでる。……イチちゃん、具合悪そうだけど大丈夫?」


無表情が基本のあたしの変化に気付いたゆーだいは、そこそこ鋭いらしい。鞄の中からカプセル型の薬を出して、ミルクティーで流し込む。


そのまま机に座って、ゆーだい達とお喋りをすることにした。どうせこの頭痛が完全に治まるまで動かないでいるつもりだったからちょうどイイ。


「……もう平気。それより、みんなゆーだいのお友達?」


いつものように、周りに悟られないように無表情を浮かべる。今度ばかりはゆーだいも騙されたようで、三人の男子を紹介してくれた。


一人はゆーだいの幼なじみ、甲斐くん。無口で何処かミステリアスな雰囲気の美形さんで、他校に彼女がいるらしい。
彼女の事をゆーだいが口にした途端、甲斐くんは表情を僅かに緩ませた。


二人目は佑磨くん。彼には六人の兄弟がいるらしく、最近両親の再婚で義理の妹が出来たらしい。派手な金髪とは裏腹に、無邪気な美形さん。


三人目は蒼くん。眼鏡をかけた美形さんで、皮肉な口調と人を見下したような態度をしている。それが理由で友達が少ないんだと、ゆーだいがおかしそうに言った。


こうして見てみると、何だか個性的なメンバーだと思う。一番びっくりなのは、蒼くんが同じクラスメイトだということ。知らなかったと素直に驚くあたしに、皮肉屋の蒼くんは呆れた視線をくれた。


甲斐くんも佑磨くんも、クラスは別だけどよくこうして四人は集まったりしているという。割と注目されているのだと言うゆーだいの口調には、自慢の色は無かった。


多分、注目されているのにすら興味を示さなかったあたしを面白がってるんだと思う。中学時代、あたしと同じ学校だったにも関わらず認識されてなかったゆーだいのことに、他の三人は笑っていた。


何だか、そんな彼らの雰囲気が好きで気付いたから帰る時間に。そろそろ帰らないと……。


「……じゃーね、みんな。」


パーカーのフードを深くかぶり、今日貰ったチョコレートを一つ食べる。甘く蕩けるこのお菓子が大好物だ。


「またね、イチちゃん。」


また明日と言わないのは、ゆーだいはあたしが不登校児だと知っているからか、それとも気まぐれにしか来ないと思っているからなのかは分からない。


………最後に、不自然な程あたしと視線を合わせようとしなかった蒼くんの方をちらりと見れば、意外にも彼は意思の篭った目であたしを見返していた。