ミヒャエルの腕に支えられ、荒く息をつきながら詩月は呟く。


詩月の上着のポケット、スマホの着信音が鳴る。


アマンダ·マクブルームの作詞作曲した「ROSE」が奏でられる。


詩月は、スマホを取り出そうともしない。


切ない歌詞と美しい旋律の着信音が、流れ続ける。


「スマホ、鳴ってるぞ。出なくていいのか?」


哀しいほど優しい旋律に乗せて、流れる歌詞が詩月の胸を締めつける。


「……相手はわかってる」


詩月は壁に背を預け、胸を押さえ、息を整えながら呟く。


「どこか悪いのか?」


「……少し。気をつけていたんだけどな」


頼りない詩月の声に、ミヒャエルがすまなそうな顔をする。


「……そんな顔をされたら、こちらが辛くなる」


ミヒャエルが不安そうに、詩月を見下ろす。


「……君のせいではないから」