「ただいまー。」

一度乱暴に脱ぎ捨てたローファーのかかとをきちんと揃え、私はリビングへ向かった。

「りんちゃんいつもより遅かったじゃない。」

ドアを開けると、お母さんが机に夕食を並べていた。

「ごめんごめん、優愛が日直の仕事あってさ。」

鞄をソファーに投げ、そそくさとダイニングテーブルの椅子に座る。

「あんたも少しは手伝いなさいよ。」

箸を並べ終えた母も、呆れた表情で私の向かい側に座った。

「私は学校帰りでつかれてるんですぅー。いただきます。」

四角いダイニングテーブルに二人分の夕食。

お父さんはいつも夜遅くに帰ってくる。

そのため夕食はお母さんと二人きりだ。

私は無心でおかずやらご飯やらに手をのばす。

お母さんはぶつぶつ明日の予定を呟いている。

そんなんで、たいした会話もなく夕食は終わった。

「ごちそうさま。」

私は立ち上がると自分の食器だけをシンクに置いてソファーの鞄を取り、自室のある二階へかけ上がった。

自室に着くと、バタンとドアを閉めてすぐさまベッドに横になる。

ここからが私のお楽しみの時間。

ベッドの横に投げた鞄からスマホを取り出して、いま流行りのSNSサイトを開く。

現れるログイン画面。

慣れた手つきでIDとパスワードを入力すると、タイムラインに移る。

私はサイト上の友達の書き込みを見つけ、コメントを打った。

『☆りん★
今日も1日お疲れ様♪
 学校疲れたー。
 みいたんの学校楽しそうでいいなー
(´・ω・`)          』

ピロリン

返事はすぐに来る。

『みいたん
 多分☆りん★ちゃんの学校とたいし てかわんないよーw
 いつかあってみたいなー♪』

みいたん、きっと可愛いんだろうな。

見ず知らずのネット上の友人と話に花を咲かせる。

それがたまらなく楽しいんだ。

しばらく画面越しに会話をして、どちらからともなく会話が終わる。

みいたんからの返事が来なくなったことを確認して私は

『そろそろ落ちるね~♪』

と書き込んで、スマホの電源を落とした。

ふと時計に目をやると22時32分。

「やば、お風呂入んなきゃ。」

この日はそのままお風呂に入り、メールを確認してから寝た。

高坂のメールアドレスは、

いまだに制服のポケットの中だ。