「それでね、」

呆然とする私をよそに優愛は話し続ける。

「茅、本気っぽいから本当のこと言い辛くてさ。

茅がりんの事好きになれば自然と別れられるかなって。」

どう?と得意気に言う優愛。

「でも…。」

私は別に高坂のこと、好きじゃないし。

そもそも男子に興味がないというか、

男子と女子の違いがわからないんだ。

同じ人間じゃないか。

皆がなぜそんなに恋愛に熱くなれるのかもわからない。

友達と恋人の境界線もわからない。

そんな私が、

「いいよ。」

私には、出来ない。

それがわかってるから、

あえて引き受ける。

どうせ高坂が私を好きになることは無いだろう。

私も高坂を好きになることはないだろう。

でも、私が引き受けて

優愛がそれで満足するなら別に構わない。

「ありがとう!りん大好き!」

優愛はにっこり笑い、私の手に何か握らせると、

「変なお願いしてごめんね、じゃあね。」

と言って手を振った。

いつもなら別れて私もすぐ帰るのだが、今日はただただ遠くなる優愛の姿を見送った。

手の中の高坂のメールアドレスを見つめながら。


_こうして、私の身代わり彼女作戦は始まったのだ。