_____夏祭り当日、参道にて。

どうしよう。

焦りを隠せない。

「未来ははぐれないようにちゃんと手、つないでたの!!」

三郷が涙ぐんで訴える。

「どうしよう…りんちゃん、未来のせいで…。」

うつむく未来。

「未来は悪くないやろ。みんなで探せば大丈夫や!落ち込んでてもしゃあないやろ。」

それを慰める神原。

何もできない俺。

俺たちは近所の夏祭りに来ていた。

ぎゅうぎゅうと人が押し合う中、参道へぬけようとした時藤咲とはぐれてしまったのだ。

むさ苦しい空間の中で必死に藤咲の姿を探す。

髪型は、服装は、背丈は_

ぐるぐるぐるぐる。

藤咲の姿を必死に思い出す。

「りんちゃんどこいったんやろか?俺、あっち見てくるわ!」

神原の方がずっと冷静だ。

神原はそう言えば俺と三郷を残して走り出した。

俺も探さないと。

「そうだ、携帯。」

俺はポケットから乱暴にスマホを取り出して、藤咲の名前を探す。

汗で指が画面を滑る。

やっと見つけた藤咲の名前。

だが俺は落胆した。

登録されていたのはメールアドレスだけ。

_仕方ないか。

俺は『どこにいる』とだけメールを送ってスマホをポケットに戻した。

頼む。気づいてくれ。

次は何をすればいい。考えろ。

「高坂くん!」

完全に冷静さを失っている俺を三郷が呼んでいた。

「あ、ごめん。何?」

「あっち、もう本堂についてるかも!本堂の方行ってみよう!」

三郷はそう言うと俺の手をぎゅっと握った。

そのまま迷いなく人混みを進んでいく。

小さくて丸みを帯びたその手のひらは、不思議なほどに冷たかった。