きっと偶然だろう。

私は高坂に一瞥くれてやると、優愛と足早に階段を降り、下駄箱でローファーに履き替えて校門を出た。

ここからは昨日と同じ。

流行りのタレントやクラスのこと、かっこいい先生のことなどの話をしながら平和な下校を楽しむ。

…はずだった。

別々になる分かれ道で優愛が立ち止まる。

これはいつものこと。

ここから長話をして飽きたら帰る。

今日はどんな話をしようか、私が話題を考えていた時だった。

「あのさ、お願いがあるんだけど…。」

「なに?また宿題写させてとか?もう勘弁してよねー。宿題ってのは自分で_」

「違うよ!!…茅のこと。」

優愛が真剣な表情で声をあげる。

瞬間、穏やかな夏の空気になんとも言えない緊張感が走った。

茅?ああ、高坂。

その人物だと理解した瞬間、頭の中で疼くさっきの光景。

「高坂が何よ…。」

私の表情がひきつっているのがわかる。

いつも通りに、自然に。

そう自分に言い聞かせていると、優愛が口を開いた。

「りんに、茅の彼女になって欲しいの!!!」