「だいたいもっとアピールしないとダメだよ、真穂は。」
「そんなこと言ったって…。見ているだけでも満足だし。」
もじもじする乙女にイライラするのはあたしの親友、橘美夏(たちばなみか)。
「まぁ…あたしはどうでもいいけど…。」
「あっ!!みてみて!またホームラン打ったよ!矢野くん!かっこゆ~い…。」
わたしが恋するのは野球部の矢野学(やのまなぶ)君。
足が速くて、優しくて…頭がいい人。
絶対…可愛い…。
「はいはい…。」
美夏はもうあたしのことなんてどうでもいいように視線を本に移した。
(ガラっ!!)
すると乱暴にドアが開いた。
何だかドアが泣いているように見える…。
「…。」
矢上海哉(やがみかいや)君…(通称矢上君)。
背が高い矢上君はドアをかがんで入ってきた。
…そのしぐさ…可愛いかもぉ…。
そう言えばケンカが強くて、お友達が少ない…って男子が話していた。
わたしも話したことがなくて…。
美夏は相変わらず本を黙って読んでいる。
矢上君はあたしたちを見ると「?」みたいな顔をした。
クラス…間違えたのかなぁ…。
…あれ?
「矢上君…?」
そういって矢上君のもとへ行く。
「…!」
「…!!」
美夏が本を閉じてびっくりしている。
矢上君も近距離のわたしを見てびっくりしている。
「真穂…!?」