「送ってくれてありがとう。」
「いや…当たり前でしょ…彼氏なんだし…。」
あ…そうだった…。
彼氏なんだ…。
「そうだよね。」
「あのさ…。」
そう言うと矢上君はわたしの前に来た。
…近いって…。
「うん…なっなに?」
「真穂は…化粧しなくても…いいと思う…。」
「は…い?」
「何回も言わせんなよ!!」
「はい!!」
「化粧…しなくても…いい…つったんだよ…。」
「…い、いや!!ダメダメ!!ぜ~ったいダメ!!無理だよ!!」
あたしがノーメイクとか無理。
「そうか?いいと思うんだけど…てか見てみたい…かも…。」
「えぇー!!」
でも…照れながら言う矢上君が可愛くて…。
「ごめん…やっぱいいわ…。そんじゃ…――。」
「明日は!!」
「?」
「あたし…明日はちょっと薄いメイクにしてくる!!」
「え…?」
「楽しみにしててね!!…って変か…。」
あたしが混乱してると矢上君は近寄ってきた。
「っぷ…やっぱ真穂おもしろすぎ…。」
「へ?」
矢上君は笑いながら頭に手を置いた。
「じゃ…朝は橘といっしょに気をつけて来いよ…。」
「…うん…。」
そう言って矢上君はわたしの頭からそっと手を離した。
わたしは矢上君の姿が見えなくなるまでずっと背中を見ていた。
…なんだろ…すんごいドキドキした…。