僕はあくまでただの人間だ。

だから勝負は、相手が僕の手管についてなにかを悟るより速く――速攻で終わらせると、決めていた。

まるで複雑に絡み合った植物の根を引きちぎるような音。

ブチブチと血管が悲鳴をあげ、彼女の胸から、まだ動き続けている赤いつぼみが。

「ぅあ、あああ――っ!?」

まさしく断末魔。

雄叫びに血飛沫を交えながら、草薙の目が見開く。

僕の掌を内側からバン、バン、と叩く命が、そして、変化した。

一気に炎に包まれ、火の粉を散らし、現れるのは深紅の薔薇。

気高い香りと鮮烈な色合い、硬く鋭い棘を持つ、綺麗な花。

一目見て、

(すごい)

と思い、

(だけど……くそっ)

腹立たしさに、奥歯を噛み締めた。

この薔薇に、僕の妹を蘇らせる力は、ない。

美しく咲く薔薇の力は凄絶でも、それは決して他者のために働こうとしない、自己中心的なもの。

傲慢でわがまま……僕の願いなどはなから聞こうともしない力だった。