† 大地



なんなんだこの人は、というのが率直な感想だった。

魔法使いとは聞いていたけれど、合図ひとつで炎を操るなんて、とんでもない。

僕の花が、ああ、見事に散ってしまったよ。

彼女は知らないだろうけど、この花は人の魂のようなものだ。

断末魔を抜き取り形にしたのが、この花々。つまり人の生きていた力。

それだけに大きな不思議も起こせるのに……彼女の炎はこれを一瞬で灰にしてしまう。

とても強い力を持っているのが、わかった。

だけど、退くわけにはいかないんだ。

力や思いの強い人間が死ねば、強い花が生まれる。

魔法使い、そして魔術師でもあると聞いた彼女なら、その断末魔はどれだけ高く響き、その花がどれだけ可憐に咲き誇るか、計り知れない。

そしてそれだけの花が、いったいどれだけの力を有しているかも。

(もしかしたら)

と思い、望む。

(もしかしたら、彼女の花で、……僕の、そう僕の妹を、蘇らせられるんじゃないか)

そんなバカな私欲を抱きながら、僕は花を二輪、取り出した。