そのトゲトゲマリモが、次の瞬間、無数の小粒槍を射出してきた。

とっさに、右腕を下から上へ、振るう。

 ウリエル
「 炎 !!」

俺とニードルの間に、紅蓮の障壁が生まれる。

ヤツの放った花びらの矢を焼き払った俺は、

「まったくもってめんどくせぇ!」

振り上げた右腕をぐ、と腰の辺りまで引き下げる。

牽引されるように引き払われた壁の向こう、花を灰と散らす大和へ、狙いをつける。

右腕を、前へ突き出した。

 ウリエル
「 炎 !!」

攻撃してくるヤツに容赦はしない。

だから狙いは、一発でヤツを捉え、丸飲みにできるように。

が、

「僕は逃げませんよ」

俺の魂胆を見透かしているらしいにもかかわらず、大和は笑み続ける。

まるでそれが、自己肯定のように。

また、花がどこからともなく、握られる。

それは、フリルのように垂れ下がった花びらの、鳳仙花。

花言葉はたしか――『私に触れないで』。

「まさか……」

炎を撃ち出し思う間に、大和の周囲へ花びらが舞い散る。

それは霧になり壁になり、俺の炎を弾いた。

(なんなんだ、コイツ……!)

それは、魔法とも魔術とも超能力とも言えない、漠然としていながら強い、力だった。