慶介は虹のメガネをかけ打席に立った。

周りからは「何やってんだ。あいつ」と罵声を受けたが、

なりふり構わずボールを待った。


ゆっくりと目を閉じ、自分がヒットを打つイメージを頭にした。

ゆっくりと目を開けた瞬間、

その時、フラッシュバックのような感覚で

頭にヒットを打った時の自分の姿や、

相手が投げてくるコース、打った時のボールの瞬間がよぎった。


「今のは一体…」

慶介はその理由を考えたが、気付いた時には相手ピッチャーがボールを投げていた。

慶介は自分がさっき頭によぎったイメージを信じ、

イメージのままでそこに来たボールを思いっきり振った。


「カキーン」

快音とともにボールは大空に向かって飛び、右中間を抜けた。

「おお!」

歓声が後方から聞こえ、全速で走る。

相手守備のミスもあって三塁打となった。

走者が2人いたので2得点。

今まであれば絶対に当たっても内野ゴロだったのに。

バクバクと心臓の高鳴る音が伝わる。


「慶介。やったじゃねぇか。」

鈴木は一番前へ乗り出して大声で言った。

なんとも言えない爽快感。


ちょうどチャイムの音がして、授業は終わった。