6限目は体育の時間だった。

春のほのやかな風が舞い、青空のもとで球が宙に舞う。

「よーし。今日はソフトボールだ。4班に分かれて、試合をしろ。」

葛城先生はそう生徒へ告げた。

体育の先生は怖くて、何にも指導をしないと思われがちだが、
この先生はみんなから好かれている良い先生だ。

慶介はC班に選ばれ、D班と試合をする事になった。

慶介はスポーツは陸上、水泳などは得意だが、

ボールを使った競技は苦手だ。

新学期になって最初でヘマをしたくない、

慶介はそういった所は真面目に思い、気合いをいれて、取り組むことにした。



「慶介良い所見せろよ~。」

友達の鈴木が声を張り上げた。

体育の授業がもうそろそろ終わりそうだが、

慶介の成績はノーヒットで、2エラー。

とてもじゃないがチームの足を引っ張っていた。

同じに班になった鈴木は応援してくれるが、

他のみんなは「あいつは駄目だな」という目で見ているような気がした。


「今日は目の調子が悪いんだよな。」

本当にそうだったが、言い訳に過ぎなかった。

最後の打席で嫌な感じで終わりたくない。

どうにかしなければと思った瞬間、

朝拾ったメガネをかけて打席を立とうと思った。



「駄目でもともと。やってやれ。」