「遅いぞ信也!!」
腕を組み俺に向かって言う大。日直なんだ仕方ないだろ。

「大くん、信也さんは日直やってたんだから…」
俺をカバーするように発言したのは大の彼女である神藤七海。一つ年下の後輩。つまり高1だ。
今まで告白される側の大が初めて告白した女性でもある。
見た目は小さくて可愛らしく、黒の髪は肩に少しかかる程度。
なんというか、妹にしたいキャラである。
七海ちゃん自身、大に気はあったので結ばれる運命みたいなものだったのだろう。

「ありがとー、七海ちゃん。その優しさで涙が出そうだ」

「大げさだよ信也~」真希菜が呆れ口調で言う。

七海ちゃんの優しさが嬉しい。マジで。

ふと唐突に真希菜が七海ちゃんに問う。
「七海ちゃんの家って動物病院だよね?」

七海ちゃんの家は神藤動物病院という名で地域のペット愛好家から慕われている。
「そうですよ。動物病院です」と何となくドヤ顔で言う。

「実はね、私が飼ってる猫が元気無いんだ…。年だから仕方ないのかも知れないけどやっぱり心配なの…」

「もしかしてミミちゃんか?」
真希菜とは幼なじみの仲なのでミミちゃんの事も覚えている。最近真希菜の家に行ってないから暫く様子を見てなかった。
最後に見たのは約2年前だろうか。まだあの時は元気だったのにな…。

「うん、目も見えてないようで…、どこかさまよう感じでとぼとぼと歩くんだ…」

「そうなんですか…」
七海ちゃんが悲しげな顔で言った。
「明日、連れてきてください。土曜日で学校も休みですし、何よりペットも大事な家族ですから!」

「うん、ありがとッ」
真希菜はその言葉で安堵感を持てたようで、少し笑っていた。
「よし、じゃあ明日ミミちゃん連れて七海の家に集合だな」
大が言う。
「俺もミミちゃんとは遊んだ事あるし、ペットは飼った事ないからミミちゃんが俺のペットみたいな感覚だしな」
「ミミは私の!!」
真希菜が頬を膨らませて大を睨み付ける。
「あはは、冗談冗談。とりあえず今日は帰ろうか」