例乃葉side


「例乃葉、さんきゅーな!」


真人がそう言って、勢いよく資料室を出ていく。


『…え…?嘘だろ?』


そう言いながら真人は、とても驚いた顔をしていた。


でも、そりゃそうだよね。


私が、真人の”あの人について知っていたなんて


思ってもみなかっただろうから…


ーーーーーあれは、入学式のとき。


その時私は、一緒に登校していていつのまにかいなくなっていた真人を


必死になって探していた。


なぜそんなに必死になってたかというと、


真人が朝からかなり具合を悪そうにしていたから。


校舎に入る時は一緒にいたから、中にいるとは思うけど…


どこかで倒れてでもいたら、どうしよう。


わたしはそればかりを考えていた。


「…あ!まさ…」


廊下を曲がると見えたいつもの後ろ姿に、心を撫で下ろしながら声をかけようとした時。