「貴が監禁されてるから今日は俺がエスコートするよ」

ただ一緒に帰宅するだけじゃない…

「甲ちゃん、今日は泊まりじゃないの?だから着替え」

「カルテ見たって言っただろ?本当は自分の目で見て診察しようかと思ったけど、

泣かせてまでやることじゃないから今度だね」

着替えを届けさせたのは単なる口実で、本当は診察… はめられた。

でもまさか、その“今度”がすぐに来るなんて、この時は想像もしてなかった。

甲ちゃんの仕事も何とか片付き、裏口からタクシーを拾って家に向かう。

幸い、マスコミには見つかってない… と思う。

うちに着くと軽い夕飯を済ませ、シャワーを浴びて寝ようとベッドに横になる。

が、慌ててラジオをつける。

『今日は夏に聞きたいラブソング、そしてそのエピソードも一緒に聞かせてください☆

では早速一曲目!RN・ジェロニモさんのリクエストで…』

よし、まだ始まったばかり。

ママのラジオをウトウトしながら聞く、唯一日課だ。

親の、しかも今時ラジオを聞くのは夜一緒に過ごせない時間を補うわけではない。

名前は出してないにしろ、ママは調子に乗るとあたしの話をすることがある。

それ以来、余計なことを公共の電波に乗せて話してないか、いちリスナーとして見守るのだ。