「頼まれてたの持ってきたよ …!!」

そう言って立ち上がろうとすると、一瞬強い目眩に襲われる。

「大丈夫か?」

間一髪のところで支えてくれた。

「うん、立ちくらみ…」

できる限りの笑顔で何事もなかったかのように振舞ってみたものの、やはり彼にはお見通しらしい。

「絹、ちょっとおいで」

嫌な予感。

甲ちゃんに手をひかれて後に付いていくと、たどり着いた先はやはり診察室。

時間的に外来の患者さんもぽつぽつとしかいない。

…もしかして体調悪いのバレた?

「そこに座って」

甲ちゃんは使われていない診察室にあたしを招くと、椅子に座らせる。

病院モードの彼はいつになく大人で、冷静で、あたしの知っている“甲ちゃん”の要素があまり感じられない。

何か診察をするわけでもなく、ただただ緊迫した空気が流れる。

甲ちゃんは溜息混じりに息を吐き出すと、重たい口を開いた。

「この間、神谷先生に絹のカルテみせてもらったんだ」

…ッ!!