「何だよ、その血…!?」

兄だと思われるその人のシャツにはところどころ赤い染みがついている。

「これ?ちょっとしたハプニングに出くわした」

ハイジャックかテロの類にでも出くわしたんですか?

弟に劣らないくらい整った顔立ちなのに、弟よりも優しそうなのに… 何だか非常に残念な出だしだ。

「悠耶サン、洗濯してくれないかなー」

「そもそも血液って落ちなくね?」

いやいや。まだソレ着るつもりなの?

彼はあたしの存在に気がつくと弟を小突いてみせる。

「あ、彼女?すみにおけないね~」

人類に誓っても、それはありえない!貴も全否定しながら事情を説明する。

「なわけねーじゃん。織衣さんのとこのガキ」

ガキて… 二つしか年変わりませんが。

「もしかして“きんか”ちゃん!?大きくなったね。十年ぶりくらいかな」

「“きぬか”です」

久しぶりの再会を親戚のおじさんのように喜ぶ彼だが 名前、間違えてる…

でも どうやらあたしのことは知っているらしい。




その日は兄が血だらけの帰国だったため、どこのお店にも入店拒否をされ 高級料理は愚か、

結局うちで適当な有り合わせの晩御飯となったのはいうまでもない。