…あまり貴のことは話したくない。

あたしは誰よりも彼のことを知っているのよって見せびらかしているみたいだもん。

ただでさえ後輩のあたしが貴といつも一緒というのも彼女達からしたら腹立たしいことなのに。

わざと「忘れてました」で済ましちゃうのは卑怯かなとか

人付き合いが上手い人はこういう局面をどうやって回避するのかなとか

授業中も頭はそのことでいっぱいだった。

結局何も思いつかないまま、お昼のチャイムだけが虚しく鳴り響いた。

「絹香ちゃん、ちょっといい?」

朝とは違う人… 覚悟は決めなきゃ。