そうは答えたものの、彼に警戒心を抱いたままの女の子との距離は簡単には埋められそうにない。

「ねぇ、どうしてみんなと遊ばないの…?」

思い切って話しかけてみると、彼女の緊張が少しはほぐれたのか小さな声で呟く。

「みんな きぅと いっちょ こわいって」

身体が弱く、ハンディがあることは親達からも聞いて知っていた。

きっと周りの子供たちも接し方が分からず、困惑しているのだろう。

「じゃあ僕と友達になろうよ」

「でも…」

この子と関わることは彼にとっても“彼女”とのことを忘れられないこと。

上書きされる記憶は余計 深手を負うかもしれないし、今度こそ奈落に突き落とされるかもしれない。

…あの人なら、こういう時どうするだろう?

そんなことをぼんやり考えていると、彼が最期に口にした言葉が脳裏に蘇った。

『もし、俺に何かあったら その時は絹香のことはお前が守ってくれ』