「Wow, pretty… I'd like to see fireworks just once」
(きれい… 一度でいいから見てみたかったの)

人気のない屋上で寄り添って見る花火に少女は嬉々と声を上げる。

今までずっと病院だったから感動は尚更だろう。

あどけなさが残る初めてのデートは幸せそのものだった。

「彼女が病気」ということを除けば…。

彼の肩に頭を置き、空を仰ぐ彼女。

「I'm sorry for Jaila. I made her the scapegoat for me, but I don't wanna go back」
(ジェイラには申し訳ないことをしたわ。

身代わりをしてくれたのに、あたしってば 帰りたくないんだもの)

「That's her…」
(やっぱりあいつか…)

「She said ”only you can wear mommy's dress very well”」
(ジェイラがね ママお手製のドレスを着こなせれるのは ジュリだけよって)

呆れ顔の少年に彼女は脱走劇のトリックの種明かしを得意げに話してみせる。

まったく 病人の彼女との入れ替わりなんて、非常識極まりないことだが…

彼女の苦しみを汲み取ることができるのも、彼女の喜びを共有できるのも 他ならぬ“彼女(片割れ)”だけなのだ。

どんなに想っても、それは揺るぎない真実。

今まで 友達ポジションの自分には割って入ることのできない2人だけの特別な距離感を

寂しく感じていた少年だったが、彼女達が自分を舞台に招き入れてくれたこの瞬間は不思議と誇らしく思えた。