彼はその日以来、学校帰りにあの少女の病室を訪れるのが日課になった。

いつも一人ぼっちの彼女はそれを心から喜んだし、彼自身も“もう一人の自分”と

答えた彼女のことを不思議な子だとも思う一方で、心を奪われていた。

それは安易な恋愛感情としてではなく、人間として興味があったからだ。

そして、今日も彼女の病室に顔を出す。

しかし普段は静かなその部屋にその日は同じ顔の少女二人の姿があった。

｢え…？｣

驚いた顔の彼にクスクス笑うベッドの上の彼女と、鋭い眼差しで睨みをきかせる彼女。

｢Kai, this is｣
(カイ、この子は)

彼女がそう言いかけた時だった。

｢I don't like you｣
(私、あんたのこと嫌いだから)

｢…？！｣

さすがの彼もこのボディブローには言葉が出ない。

初対面でいきなり嫌いって、片割れを取られたヤキモチか

それともどこかで会っていて気づかぬうちに傷つけていたのか…

｢Did you skip grades？ Younger Japanese, huh？｣
(あんた飛び級したんでしょ？幼い日本人なのにね)